「登録しといて。何かあればメールして」

「はい、分かりました」

「じゃ」

 その一言だけを残して去って行く王宮くん。生憎の曇り空が太陽を隠しているけれど、それでも彼は光っているように見える。

 なるほど、確かに“王子”だ。

「って、洗脳されないの私!」

 顔を両手でパンパンと叩く。
 そして大きな音で予鈴が鳴る中、走って下駄箱を目指した――


 木下彩花。
 あまりに急な出来事だったけど……今日から私、彼氏が出来ました。

ピロリーン

「あ、メールだ」

『追加。俺のこと、絶対好きにならないこと』

「……」

 その彼氏はちょっとムカツク、王子と呼ばれる王宮樹くん。
 私は彼の、(仮)彼女。