「そんなに苦労してたんですね？」

「別に……あんた、名前は？　いま、携帯持ってる？」

　余計なことは一切話さない。
　必要事項だけの情報を、王宮くんは欲しがった。

「木下彩花（きのしたあやか）です。
　アドレスは――――で、後ろはソフトボンクです。＠の後ろ、分かりますか？」

「俺もその会社だから」

「お～偶然ですね」

　すると暫くもしない内に携帯が震える。
　見ると、知らないアドレスからのメールだった。