- another -

「……」

「む……が」

 気持ちのいい平手打ちのような音がしたかと思えば、今まで隣に座っていた木下がいつの間にか後ろを向いて立っていた。その手は、掛下の口を押えている。


「それ以上は、シーですよ?」


 木下は冷や汗をかいていそうな表情だったが、それと正反対だったのが掛下だ。あいつの手をゆっくりと解いて、何やら含み笑いをしている。

「なぁ、王宮」

「なに?」

 そして――

「彩花ちゃん、可愛いな。俺のタイプだわ」

「……はぁ!?」

 俺の耳元で、そう囁いたのだった。