「お互い知っている同士ならまだしも……。
 ま、まず名前を教えてください!」

「は?」

「へ?」

 彼が素っ頓狂な声を出すものだから、私もついつられてしまう。

「お前、知らないの?」

「え、あなたの名前をですか? 知りませんが……なぜ?」

 なぜ私があなたを知っていると、そう思うの?
 その日に会ったのだから知らないのは当り前でしょ?
 彼の言っていることが、理解できなかった。

 すると彼は驚いたまま「そうか」と言う。そしてまた考え込んだ。
 何なんだろう、一体。