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蝉の声が朝から鳴り止まない夏の日。



窓の外を見ると、眩しい太陽と青い空、白い入道雲が見える。



扇風機の風にあたりながら、布団の上に寝っ転がっているあたしを見て、お母さんがため息をつく。



「夏休みに入ってから、ゴロゴロしてばっかりね」



「だってぇ~暑いんだもん」



「プールにでも行ってきたら?ふたりは?」



「色羽は部活~。成は出掛けたんじゃない~?」



「俺ならいるよーん?」



お母さんの後ろから、ひょこっと顔を出した成。



「あら、いらっしゃい。成くん」



「こんちはー」



「ちょうどよかったわ。華のこと外に連れてってくれない?」



「了解でーす」



「頼んだわよぉ~」



お母さんは成の肩を叩いたあと、他の部屋に行って掃除機をかけはじめた。



あたしはゆっくりと起き上がる。



「髪ボサボサだなっ」



「げっ」



あたしは慌てて鏡の前にいき、ブラシで髪をとかす。



いくらこんなあたしを見慣れてるからって、成だって女子力低いあたしを女の子として見てくれるわけないよね。



色羽はなんでこんなあたしを好きなんだろう。不思議だ。



恋する女の子は、もっと可愛くならなきゃダメだ。



鏡の前でため息をつくと、後ろから成があたしの髪を掴んだ。



「結んでやるよ」



鏡越しに満面の笑みを見せる成。



「い、いいってば。自分でやるし……」



「なに遠慮してんだよぉ。今日はどんな髪型がいい?」



成は器用だけど、あたしの心臓がドキドキして持たないってば。



「華?」



「じゃあ……なんでもいい」



「そ?わかった。俺にお任せってことな」



あたしの髪に触れる優しい成の指先。



恋ってどうしてこんなに胸が苦しいんだろう。