「ねぇ、成……」



「ん?」



「行きたい場所があるんだけど……付き合ってくれる?」



「うん。いいよ」



お墓をあとにしたあたしたちは、バスに乗って駅へと向かっていた。



バスの後部座席にあたしたちは並んで座り、窓側に座るあたしは、外の景色を見つめる。



「華、どこに行く気?」



隣に座る成が聞いた。



「……海」



「海?俺、水着持ってきてないけど?」



「泳がないしっ」



「えー?夏なのに~暑いのに~」



「ふふっ。じゃあ成は裸で泳げばっ?」



「そーするー」



「え?冗談で言ったんだけど」



「俺は泳ぐもーん」



バスを降り、切符を買って、駅の改札を通る。



駅のホームに立つと、リュックを背負ったままの小学生くらいの男の子がホームのベンチに座っていた。



「成、あの子も電車待ってるのかなぁ?」



あたしの隣にいたはずの成は、いつのまにかベンチの方へと歩いていた。



「ちょっ……成?」



あたしの叫んだ声に、ベンチに座っていた男の子はこっちを向いた。



成は、男の子の前に立つ。



「……兄ちゃん?」