「妻もアイツも俺のそばからいなくなって……ひとりになった俺が生きていく意味なんてない……ないんだよ……」



涙を流すおじさんの背中を成が優しくさすっていた。



「そんなこと言うなよ、おじさん……」



「おじさん、色羽の夢、知ってる?」



おじさんは顔を横に振った。



「色羽の夢はね……保育士だったんだよ。色羽って子供が好きなんだよ?ね?成」



そう言って成に微笑むと、あたしの瞳からも涙がこぼれ落ちた。



「あぁ……」



成の瞳にも涙が溢れる。



「保育士が夢だったのか……そうだったのか……アイツが子供を好きだってことも、全然知らなかったな……」



だからあの男の子を必死で助けた。そうでしょ?色羽……。



色羽は小さな命を救ったんだよ。



がんばったよね、色羽……。



「おじさん……生きていく意味がないなんて、そんなこと言わないでよ……。色羽も色羽のお母さんも、きっと心配する……。心配させちゃダメだよ……」



あたしは色羽のお父さんの左手をぎゅっと握り、



成は色羽のお父さんの右手をぎゅっと握りしめる。



「色羽のお母さんが亡くなったとき、いまのおじさんみたいに、色羽がひとりでここに座ってた」



15年前のあの日。



「こうやって3人並んでね、手を繋いで……空を見上げてたの……」



あたしたちは、この場所で出逢った。



「それが、色羽との出逢いだったんだよ……」



あたしが泣きながら微笑むと、おじさんもあたしたちの手をぎゅっと握り返した。



「……ありがとな。色羽のそばにはいつも華や成がいてくれたから……アイツは寂しくなかったと思う……本当にありがとな……ありがとう……アイツのそばにいてくれて……」