「イエーイ!俺1ばーんっ!」



最初に橋の上に着いたのは成だった。



その次に色羽、あたしがビリ。



「成は、途中で信号無視したからだろ?だからおまえビリな」



「うわぁー。そりゃないって」



成は肩をガクッと落としたあとで笑顔を見せた。



成の……その笑顔ひとつで、胸がぎゅっと苦しくなる。



文化祭の時の出来事は、なんだったんだろう。



離れようとしたあたしを抱きしめたのは、あたしの勘違いだったの?



寝てる間にキスされたのは、夢だったの?



成に本当のことを聞けないまま、時間だけが過ぎていった。



あれから成も、普段となにも変わらない様子だったし。



やっぱり夢の中の出来事だったのかもしれない。



だって成には砂歩がいる。



あたしにキスなんてするわけない。



ぎゅって抱きしめられたのも、ただの勘違いだったのかもしれない。



成がそんなことするわけないもん。



冷静に考えたら、簡単にわかるのに。



あたしだけが意識して、本当バカみたいだよね。



あたしは何を期待してたんだろう。



あたしたちの関係が変わるわけないのに。