「おーい!成ー?」
その声に成は、立ち上がって出ていく。
やってきたのは、ゾンビの格好をした色羽だった。
「成。そろそろ交代だって」
「え?あ、そう。わかった……いまいく」
あたしも立ち上がると、色羽は驚いた様子であたしの顔を見つめた。
「え?華がなんでここに?」
「あ、うん。えーと。成にジュース持ってきた……へへっ。色羽のもあるよ?……はいっ」
ジュースの缶を差し出すと、色羽はあたしの顔をジッと見つめたあと受け取った。
ヤバい。あたし明らかに動揺してる。
なんかあったって、もしかして色羽に気づかれたかな。
「そ、そうだ。あたし先生に呼ばれてたの忘れてたぁ。先にいくねっ」
あたしはふたりをその場に残して、走っていく。
やばい。通常のルートを逆走して入口に向かっちゃってる。
だけど、それどころじゃない。
とりあえず外に出なきゃ。
「あれ?望月……なんで?入口だぞ、ここ」
お化け屋敷の入口に立っていた男子が不思議に思うのは当然だ。
「ごめーん!怖くて逆走してきちゃった」
「ハァ!?マジかよ」
「へへっ……じゃ」
あたしは廊下を全力で走っていく。
さっきのは一体なに……?
成はなんであたしのこと抱き締めたの?
それともあたしの勘違い?
そうだよね。そう。
勘違いだったのかも。
だって成は砂歩と付き合ってるんだから。
そんなことするわけないよね。
「そんなことするわけない……」



![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)