グッバイ・メロディー



ずっと差し出されたままの手が視界の端に入ったので、慌てて握る。


とても、さらさらした感触。

いったいどんなケアをすればこんなお上品な手ざわりになるんだろう?


「今度ライブでお見かけしたら声かけてもいいですか?」


長いまつげははなちゃんに負けないくらいフサフサなうえ、ぐるんと天にむかってカールしている。

つくりモノじゃなくて天然素材だっていうのは、見たらわかる。


お金持ちのおうちに生まれて、とても気持ちのよい性格で、おまけにお顔もこんなに美しいなんて。

不公平すぎる神様にウラミゴトを言いたくなるのもすっかり忘れてぶんぶん首を縦に振った。


なんだかいいにおいがする。
においまで、お花みたいなんだな。


「あ、そうだ! こないだは時間が合わなくてCD買いそびれちゃったので、また機会があれば販売していただけるとうれしいです。絶対に欲しかったのに……」


エミリちゃんはさみしそうな声でみんなにむかって言うと、左の手首に巻きついているピンクゴールドの腕時計に目を落とし、そろそろ帰らなきゃ、とひとりごとみたいに続けた。


「じゃあアッキーくん、また遊んでね。ばいばーいっ。すみません、おじゃましました!」