トシくんがみんなの飲み散らかしたグラスやらカップやらをテーブルの中央に集め、おしぼりをひとまとめにしてくれて、それぞれで退散する準備をしていると、突然、かわいい声がその輪の真ん中に落ちてきた。
「あれ? アッキーくんがいる」
女の子だった。
ブレザーともセーラー服とも違う、シスターが着るような修道服をカジュアル風にアレンジしたデザインの制服は、ここらではちょっと別格な意味を持っていて、見かけるだけでひそかに騒がれてしまうほど。
通称“エンジョ”の園田女学院にはお金持ちのお嬢様しか通っていないとよく聞くけど、どうしてアキくん、知り合いなんだろう?
「うお、エミリちゃん! びびったー」
かわいいというより上品な造りをしている顔を見たとたん、アキくんがぱあっと嬉しそうに笑って声を上げた。
まさかいまのカノジョ、
と勘ぐる前に、“エミリちゃん”はアキくん以外の3人の顔も順番に見ていき、感激したように手を胸の前で組む。
「わたし年末のライブ行きましたっ。こんなに間近でみなさんに会えるなんてうれしい!」
エンジョのコがロックバンドの対バンに来るなんて!
彼女たちはみんなクラシックコンサートに行って、ショパンやモーツァルトを聴いているんだとばかり思っていたよ。
本当に信じられない。
びっくりしちゃった。
そして同時に、こんな住む世界が違うような女の子にもあまいたまごやきの音楽が届いているのだと思うと、とてもうれしかった。



