「俺はマコに動画送っただけだよ」
短いため息をついたあと、なぜか、弁解するみたいな言葉。
それより、あの関谷マコトさんのことを当たり前みたいに『マコ』と呼んだから、なんだかそっちのほうが感動してしまった。
本当にいっしょにバンドをやっていたんだ。
それっていつごろの話なんだろう?
「勝手にSNSに流したのはあいつだよ。それがいまこうして拡散されてんのは、俺のせいでもマコのせいでもなく、おまえらの実力が“そうだった”ってことなんじゃねえの?」
こうちゃんはずっと無言だった。
カウンターの上に差し出された包装済みのピックを受け取ることもせず、なにかを探るような目でじっと脇坂さんの顔を見つめたまま、びくとも動かない。
こうちゃん、なにを思っているのだろう。
いつもなんでもお見通しのわたしでもぜんぜんわからない。
もしかして、本当は、嫌だったのかな。
こんなふうに不可抗力みたいにして人目に晒されてしまって、こうちゃん、居心地悪く思っているのかな。
大好きなこうちゃんたちをほかの誰かに知ってもらえて、カッコイイって、いいなって言ってもらえること、手放しで喜んで、考えなしにはしゃいで、無神経なことをしてしまったのかもしれない。
そもそもこうちゃんは昔から前に出たがるタイプではないの。
むしろどちらかというと、目立つのってすごく苦手なほうで。
それをわたしがいちばん知っていたはずなのに、こうちゃんのこといちばんよくわかってるとか豪語しておいて、最低なことをしてしまった。



