「ピックだけでいいか? なんか気になるのあった?」
すぐ傍にあるカウンターのむこう側へ行った脇坂さんに無言のままついていき、小さな三角たちをバラバラとレジに置くと、こうちゃんは「これだけで」とぼそりと言った。
こうちゃんは脇坂さんのことがたぶん苦手なんだろうな、と思う。
誰に対しても心を全開にするほうではないけど、そのなかでも特に圧倒的な苦手意識を持っている相手なんじゃないかな。
たしかに立っているだけで威圧感スゴイもんね。
わたしなんか、会えばセクハラめいたことを言われるし。
ジョーダンだってわかっているけど。
でも絶対に悪い人じゃないと思うんだ。
地元のバンドマンたちのこと、自分の弟みたいにかわいがっているのが、すごくよく伝わってくるから。
「そういや動画、すげえ拡散っぷりだな。見た?」
お会計を出しながら脇坂さんが思い出したように言った。
「なんで関谷マコトに動画送ったんですか」
千円札をトレーに置いたこうちゃんが質問で返した。
「なんで俺が送ったって思うんだよ」
「ふつうに誰でもわかる……」
「そうか、そらそうだわな、勝手なことしてワリィな」
おつりを用意しながら言い、脇坂さんが少しうかがうようにしてこうちゃんのことを見た。
つられて、わたしもこうちゃんの横顔に目を向ける。
なんだか機嫌がそんなによさそうな顔じゃない。
どうして?



