「お。洸介じゃねえか」
いつも使っているピックを手に取ったこうちゃんと店内をぶらついていたら、重低音な声に呼び止められた。
ベースみたいな、よく知っている声。
「どうも」
こうちゃんがぺこりと小さく頭を下げた。
それといっしょに、見えないところにある手にぐいっと引き寄せられた。
優しい力。こうちゃんの手。
脇坂さんはミスターグリッターのオーナーさんでもあるけど、この楽器屋の店長さんを本業としている。
彼のおじいさんの代から続くお店で、もとは楽器屋だけだったのを、脇坂さんが改築してスタジオありきのものにしたんだって。
地元のバンドマンたちはだいたいここのスタジオで練習するし、この店で機材をそろえている。
脇坂さんは本当にボス。
こうちゃんにとっても、もちろんボスだ。
「それにしても季沙ちゃんの制服姿はいつ見てもイイね、そそるね」
またこういうこと言う!
そそるってなんですか!
と、プンスカする前に、こうちゃんがもう一度わたしの手首を小さく引っぱった。
「うお、すんげえ無言の圧力、コワ」
脇坂さんがからりと笑い、こうちゃんがムッとした顔をした。
絶対的ボスにもこういう態度を平気でとれてしまうところ、心配になるけど、いまのはわたしを守ってくれてようとしているのかと思うとちょっとうれしい。
こうちゃんは過保護だな。
わたしもこうちゃんに対して、とても過保護だと思うけど。



