「おい、オレにも大吉分けろっ」
「俺も洸介のご利益にあやかろうかな」
「じゃあおれも」
いきなりアキくんとトシくんとヒロくんがやってきたかと思えば、あれよあれよというまにこうちゃんの大吉にそれぞれ自分のおみくじを結んでしまった。
そこだけ、へんてこりんにカタマリができている。
「運勢泥棒……」
こうちゃんが心の底からげんなりしてそんなことを言うので、アキくんにつられて笑ってしまった。
こういうのを見ていると、4人は本当になんの変哲もない、ほかのみんなと同じような学生なのだということを実感する。
あんなにかっこいい“バンドマン”のときが嘘みたいに、いい意味でフツウなの。
いったいどっちが本物なんだろう、なんてふと考えて、ああどっちも本物なんだな、って思い直した。
「いいねえ。若いねえ」
いつのまにか隣に来ていたみちるちゃんがしみじみと言うのでおかしな気分になってしまった。
アキくんが大きな声で笑って。
ヒロくんが嫌そうにしかめっ面をして。
その様子をトシくんが優しく見守って。
こうちゃんがひとりだけ興味なさそうにしていて。
いつも当たり前みたいにそこにある、それでいて奇跡の集合体のような景色を、ずっとここから眺めていたいよ。
そう思うとちょっと泣きそうになるの。
おかしいな。
いますごく、寒いからかもしれない。



