グッバイ・メロディー



神社は新年を待つ人でごった返していた。


甘酒をもらいに行っても、こうちゃんとヒロくんだけはいらないと言って飲まなかった。

毎年のことだからこうちゃんが甘酒を好きじゃないことは知っていたけど、ヒロくんもそうだったとは意外。

しかも食わず嫌いならぬ飲まず嫌いだって。
ニオイがもうダメって。


こいつはオレンジジュースしか飲まねえ、とかてきとうなことをおもしろがって言うから、アキくんはヒロくんに嫌われてしまうんだ。

中学生男子がマジでウザイって顔をしている。



「完全につきあわされただけで無理」


みちるちゃんの周りを犬みたいにうれしそうに駆けまわるアキくんを眺めながら、ヒロくんがうんざりしたようにこぼした。

これじゃどっちがお兄ちゃんなのか、本当にわからない。


「年末年始は引きこもってイベント走る予定だったのにな」


仏頂面の隣で、トシくんが和やかにくすくすと笑う。

イベント、というのはヒロくんがやりこんでいるスマホゲームの話みたい。
限定ガチャがどうのって、説明されてもサッパリだったけど。


「ヒロくんは好きな女の子とかいないの?」


軽い気持ちで訊ねたのに、ほんとのほんとに嫌そうな顔をされてしまった。


「べつに。なんか女子ってウゼェし」


常に群れている感じがいちばん無理だって。


たしかにヒロくんは一匹狼で、男の子の友達ともつるんでいるイメージがあまりないかも。

そのあたりも本当にアキくんとは正反対だって思う。


それにしても、わたしもいちおう女子なので「女子ってウゼェ」に多少グサッときていると、すかさずトシくんがフォローしてくれた。

そう、こういうところが王子様たる所以(ゆえん)だ。

こうちゃんにまたなにか言われそうだから、口にはしないけど。