「大丈夫だよ。アキくんの言う通り、みちるちゃんのほうがそういうところはしっかりしてると思う」
「アキはどこまで冗談でどこから本気かわかりづらい」
ちょっとブスっとしてつぶやくと、こうちゃんは再びギー子さんをポロポロ弾きはじめた。
「こうちゃんは、そういうのないの?」
興味本位で聞いただけなのに、驚いたような怒ったようなすねたような顔をするから、どうしちゃったのかと思う。
「アキくんにあんなこと言っといて、かわいい子がこうちゃんのファンです、好きですって言い寄ってきたらどうするのかなーって思って」
「俺は誰にも興味ない」
16歳の男の子がこんなことを言いきってしまうのは逆に問題アリなんじゃないかと思う。
バンドやるって言いはじめたときは女の子にモテたいのかなって思ったりもしたけど、こうちゃんって、この地球上で本当にギターにしか興味がないのかもしれないよ。
よけいなお世話だろうけどちょっとさすがに心配だ。
「ね、きのうCD売っててさ、かわいいなって思う子とかいなかったの?」
「季沙は?」
なぜか、いきなりカウンターパンチが飛んできた。
「トシのこと、入学式で最初見たとき『王子様みたいでかっこいい』って言った」
「え!?」
たしかに、言ったかもしれない。
言ったかもしれないけど。
すごく軽い気持ちで口にしたそんな一言を覚えられていたなんて、いまとなっては穴があったら入りたいくらい恥ずかしい。



