「ね、そういえばもうちょっとでツアーだね」
体ごと向きを変えて、正面から向かいあう形になると、そっと腕のなかに受け入れてくれた。
首にぎゅっと抱きつく。
世界でいちばん安心できるにおいに満たされて、このまま一生くっついていたいとさえ思う。
「楽しみ。ぜったい行くからね」
「うん。待ってる。ありがとう」
あまいたまごやき、初のワンマンツアー。
といっても、ドームやアリーナみたいな大きなところをまわるわけじゃない、全国のライブハウスをまわるツアー。
それが始まれば、会うのはもちろん、なかなか連絡も取りあえなくなってしまう。
だからこそ、いま、こうしてはるばる会いに来ているというわけだ。
いっしょにいたい。
それは、幼いころから変わらない気持ちだけど、きっといまのほうがもっと、大切にしている気持ち。
「ね、こうちゃん。ギター弾いてほしいな」
「いいよ」
もういちどわたしを後ろから抱えたこうちゃんが、いっしょにアコちゃんを連れてきた。
すぐ目の前で奏でられる音楽に身を委ねていると、子どものころに戻ったような、うんと大人になったような、おかしな気分になる。
前より少し遠い場所で、
そして、前よりうんと近い場所で。
鳴り響いた音符は深い愛に姿を変え、これからも絶え間なく、やさしく寄り添い続けてくれるのだろう。
「ねえ、こうちゃん。
わたしね、こうちゃんの弾くギターが、世界でいちばん大好き」



