グッバイ・メロディー



「だから……俺の決意表明は、アキとヒロとトシが、一緒にやっててよかったと思える曲を作り続けること。オーディエンスが、もっと聴きたいと思う音楽にしていくこと」


こうちゃんのまっすぐな目が、そっと、だけど確実に、わたしを捕まえた。



「それから――春から少しだけ遠い場所にいる、季沙に音楽を届け続けること」



我慢していた涙腺はもう大崩壊だった。


思わずステージに駆けのぼり、ぎゅっと抱きつく。

だけどあいだにエレ吉くんがいるせいで上手にできなくて、ちょっともどかしい。


でも、いいの。

だって、ギターは、こうちゃんの一部だもんね。


表明なんてしなくても、もうかすかに聴こえているよ。

少し遠い場所から響いて届いてくる、ずっと鳴りやまない、大好きなこうちゃんの音楽が。



「マジで勘弁してくれ」


もはや泣き顔を隠そうともしないアキくんが、涙をあずけるみたいにこうちゃんの肩に寄りかかってきた。


「なに泣いてんの……」

「うるせえよ! 洸介、オレたちはな、おまえに出会えて、ほんっとーに幸せだと思ってんだからな」


今度は泣き笑いしながらこうちゃんを羽交い絞めにした。

大親友はうっとうしそうに逃げるけど、本当はぜんぜん嫌なんて思っていないこと、アキくんもわたしも、ちゃんと知っている。


「なあ洸介」

「なに」

「おまえギター弾けよ?」

「言われなくても毎日弾いてるけど」

「そうじゃねえよ。なんか弾けよ、いま」


こうちゃんはしばらくきょとんとアキくんを見つめて、それから少し笑った。

そして短く、いいよ、と言った。