ヒロくんが黙りこんだあと、残るはこうちゃんだけとなった。
全員の視線がいっきにステージ上手に集まる。
それを一身に浴びているこうちゃんは居心地悪そうにちょっと目線を下げ、くちびるをぐっと内側に巻きこんだ。
そしてゆっくり、結ばれていた口元をほどいたのだった。
「正直、こんな事態なんか想定してなかった。CD出すとか、デビューするとか、東京行くとか。いまだに嘘みたいに思うことが少なくないし、地に足がついてないと感じるときもある。
それでもやっぱりステージに立つと実感する。目の前にはオーディエンスがいて、爆音が体中に響くくらい鳴ってて。こんな場所でギター弾けてるのは特別なことだって、毎回思う」
そこで言葉を止めたこうちゃんは、ふうと一度、大きく息を吐いた。
「本当にありがとう。なんとなくで始めたバンドが想像以上に成長しつつあるのは、すごいボーカルと、ドラマーと、ベーシストのおかげ。これからもよろしく」
同じ高さにいる3人にむけて深々と頭を下げたこうちゃんに、たぶんその場にいる全員が驚いていた。
もちろん、わたしも同じだ。
アキくんなんかもうすでにぼろぼろ泣いているんだから、またわたしまで、もらい泣きしちゃいそう。



