「しかもほとんどアキが売ったし」
こうちゃんがちょっと笑う。
バンドマンというより売り子と呼ぶほうがしっくりくる姿を思い出したら、わたしもつられて笑ってしまった。
「でも御の字。ルーキーの見切り発車にしてはなかなかやったほうなんじゃない」
本当に、嬉しそうな顔をするんだね。
かわいい。
ぎゅってしたくなる。
少年に戻ったみたいな幼い横顔。
これは、ずっとわたしだけが見てきた横顔。
「ね、こうちゃん」
「なに?」
「手、つないでもいい?」
一瞬びっくりしたようにこっちを見たあとで、それでもこうちゃんは手を差しだしてくれた。
「いいよ」
そっと、握ってみる。
同じ強さで握り返してくれる。
どこまでも硬い指先。
それなのに、優しい感触が不思議。
冷たい風から守るように包みこんでくれる温もりが心地よかった。
こんな手のひらをしているのはきっと、世界中で、こうちゃんひとりだけだよ。
「お疲れさま」
「ん、季沙も」
あしたの朝は、わたしが起こしにいくからね。
いつもと同じ、ねぼすけのこうちゃんに会いにいくからね。



