グッバイ・メロディー



やがて体の汗も引き、冬の夜に凍えてしまいそうになりはじめたころ、待ち焦がれたその人と仲間たちは、やっと姿を見せたのだった。

いつのまにか人の波もほとんど消え去っている。


「おー、お疲れ」


4人に気づいた脇坂さんがねぎらうように声をかけた。


「お疲れさまです。きょうは物販のためにスペース貸していただいて、ありがとうございました」


トシくんがうやうやしく頭を下げると、いかついお兄さんはあしらうみたいにして「いーよいーよ」と軽く答えた。


「それで、これ、売上の半分なんですけど」


かしこまった茶封筒を見た脇坂さんがウワッと声を上げた。

眉間にぐっと皺が寄っている。

こんなものは本当に見たくないという顔だ。


「だから、いらねーよ。どーせチャチな金額だろ?」


500円のCDを最大で250枚売り切ったとしても、12万5千円。

高校生や中学生のお小遣いとしてはじゅうぶんすぎるかもしれないけど、CDを作るためにかかった金額のほうがはるかにデカいって、こうちゃんから聞いた。


きっとそれをわかって、脇坂さんはこんなふうに言ってくれているんだ。

みんなにとってのボスにも、もしかしたらこういう時代があったのかもしれない。


「音楽で稼ごうが、そうじゃなかろうが、出世払いでって言ったろ。わかったらガキどもはとっとと帰れよ!」


笑いながら行ってしまった広い背中が見えなくなると、ライブと物販とで体力を使いきってヘトヘトになった若者たちは、力なく視線を交わしあった。