「ね、ほんと……に?」
長く深いくちづけを終えたあと、酸素を求めながら、すぐ近くにある顔を見上げると、大好きなその顔は少しだけ切なそうにゆがんだ。
「嫌?」
「や、やじゃない、けど……」
さっきも言ったとおり、心の、準備が、ですな。
「こうちゃん、お願い。ちょ、ちょっと、ほんのちょっとだけ待って……」
「ん」
まるで全身が心臓になってしまったみたい。
わたしいま、いったいどんな顔をしているだろう。
こうちゃんがあんまり真剣に見つめてくるから、顔が熱くて仕方ないよ。
こうちゃんの大きな手が、そっとわたしのそれに重なった。
ほどけていた指がもういちど絡む。
すごく、あったかい。
安心する。
ああ、そうか、こうちゃんはわたしに女としての魅力を感じていないわけでも、なにかの病気を患っているわけでも、無欲だったわけでもなく。
きっと、ずっと、待ってくれていたんだよね。
わたしは本当に、大切に、
とても、とても、大切にしてもらっているんだ。
「い……い、色気のない下着を、きょうは穿いてるはずなんだけど……それでもいいですか」
うわずった声になってしまう。
「なに?」
「だって、あまりにも突然だからなんにも準備できてないんだもん。もっとダイエットとかスキンケアとかしたかったのに……」
「ん、べつになんもしなくていい。そのままの季沙がいい」
こうちゃんはやっぱりずるい男の子だ。
好きな人にそんなふうにささやかれて、それでもダメって言う女の子なんてきっといないんだから。



