「泣きすぎ。まだ春になるまで半年もあるのに」
「だって……」
「自分で決めたんじゃなかったの」
「う……そうです」
こうちゃんの親指がぐいと涙を拭ってくれた。
もう泣かない。
だってわたしがびいびい泣いていたら、過保護のこうちゃんは心配で東京に行けなくなってしまうかも。
どんなに小さくても、こうちゃんのなかに不安を残したくないよ。
がんばらなきゃ。
季沙は大丈夫だって、ちゃんと思ってもらえるように。
「できるだけ長く、一緒にいよう」
涙の粒を全部さらっていったこうちゃんが、とても優しく微笑んだ。
その顔を見て、恋の相手がこうちゃんじゃなかったらわたしはたぶんいっしょに行っていただろうな、と思った。
こうちゃんだから、わたしたちだから、ぜったい大丈夫だって思えるんだよ。
離れても、ぜったい、
ぜったい大丈夫。
「俺もこれからなるべく季沙との時間作るようにする」
こつん、おでこが優しくぶつかる。
「だから季沙も、できるだけたくさん、俺の傍にいて」
ふと、長い指がわたしの頬をゆっくりなぞった。
慈しむような優しい手つき。
輪郭を確かめ、存在を確認するような、丁寧な触れ方だった。



