「わたし、ごはん作ったり、お菓子作ったりするの、すごく好きかも」
「それ、すっごく素敵だと思います!」
衣美梨ちゃんがぱあっと声を上げると、みちるちゃんも煙草を灰皿に押しつけてにんまり笑った。
「じゃあさ、調理師免許とか、パティシエの資格とか取ってみるのはどう?」
「免許……、資格?」
「そうそう。調理とか製菓の専門学校もたくさんあるし、そういうのが好きなら本格的に勉強してみるのもいいんじゃない?」
そうか、世の中には、そんな道もあったりするのか。
たしかに料理をしたりするのは好きだけど、それをちゃんと勉強して、仕事にしようだなんて考えたこともなかった。
「うん……なんかそれって、いい、かもしれない」
料理をするのが好き。
お菓子を作るのが好き。
そしてそれを食べてもらうことが、もっと好き。
それをもし、自分の仕事にできたら。
なんだか考えるだけでわくわくしてしまった。
このあと家に帰ったら、ちょっと、真剣に調べてみようかな。
「いいね、なんか、若いんだなあって改めて思っちゃった」
ストローでコーヒーを吸い上げたみちるちゃんがしみじみと言った。
「みちるちゃんだって若いじゃん」
「いやー、そういうことじゃなくてさ。夢とか希望とか、そういうのって、その時期ならではの悩みだなあって思って。がんばりなよ、季沙。洸介くんに負けてらんないね」
目の前に座るふたり分の笑顔を見ていたら、わたしにはこんなにも頼れる人生の先輩がいるんだって、突然すごく心強くなった。
「うん! ありがとう。がんばらなきゃ」
こうちゃんに話してみよう。
料理とお菓子の世界に興味があるかもって。
夢が見つかったこと、いちばんに、こうちゃんに聞いてほしいよ。



