「むずかしく考えすぎなくていいんじゃない? きっと身近なことでいいんだよ。洸介くんがギターを始めたのだってお父さんの影響だったんでしょ」
身近なこと、と言われても、味も素っ気もない、ふつうの毎日だ。
朝起きて、学校行って、授業受けて、それから……。
そういえば、一日のどの場面を思い浮かべてもこうちゃんがいる。
それはもう本当に、笑ってしまうくらいに。
「あ……」
だけどその気持ちは、だからこそ、自然にポコッと生まれたんだと思う。
「ごはん」
いただきますとごちそうさまのときに合わせられる手、
おいしいって言ってくれる顔、
完食してくれたきれいなお皿。
あんなに好きな時間、幸せを感じる瞬間、ほかにないなあ、と、ふと思った。
なんでもないわたしが、唯一もっている特別なもの。
こうちゃんのことが大好きだという気持ちと、
こうちゃんのためになにかしたいという願い。
こうちゃんに、おいしいなにかを作りたい。
わたしがいつでもお腹を満たしてあげたい。



