「ていうか、そうだよ、衣美梨はどーすんの?」
みちるちゃんが思い出したように声を上げた。
「エンジョの大学にそのまま持ち上がったんでしょ? てことは、少なくとも4年間は地元にいないといけないんだよね?」
「はい、というかわたしは本当に、おふたりと違って、ついていけるような立場にもないので」
お上品な顔が困ったように微笑む。
「両親もかなりうるさいですし……」
お嬢様というのもそれはそれで大変なんだな、とまるでファンタジーの世界のように思ってしまった。
そういうあたりも、ひょっとするとトシくんとわかりあえるところがあるのかもしれない。
みちるちゃんはあまり納得できていないようにくちびるを突き出して「ふうん」と小さく唸ると、再びこっちに視線を戻した。
煙草の灰をトントンと灰皿に落とす。
「で、季沙は結局どうするの? もうそろそろ受験勉強も本腰に入るところでしょ」
「う……そうなんだよー」
同級生のほとんどはすでに受験モードだ。
みんな志望校に向かってまっしぐらで、わたしはどちらかといわずとも、その波に乗り遅れている。
もともと頭の良いはなちゃんなんか、レベルの高い大学にむけて2年生の終わりごろから受験勉強を始めていたし。
うちのお父さんとお母さんはそこまで教育熱心というわけでもなく、いまのところなにも言ってこないけど。
でもやっぱり、どうしても焦る。
いまこの瞬間だって、友達のほとんどが受験勉強をしているんだなって思うと。



