「あー楽しかった!」
汗だくの体を外気で乾かしながらみちるちゃんが声を上げる。
普段はコート無しではいられないはずの真冬の夜が、ライブのあとはクーラーみたいに涼しくてとても気持ちいい。
「4番目だったね! てことは、次はトリかな?」
4度の対バンをこなしてきたあまいたまごやきは、初っ端にオープニングアクトを務め、次は2番目、その次が3番目で、今回の4番目というふうにきている。
アンコールを受けるのはラストに演奏するバンドだから、トリというのはほんとに大変な役目だし、バンドマンにとって格別の意味を持つ演奏順だ。
「それはあいつら次第かな」
いきなりベース音みたいな低い声が会話の真ん中に落ちてきた。
ふり向くと、ツーブロックの髪をオールバックにして固めた強面のお兄さんがニヤリと笑った。
脇坂さんには何度会ってもビクッとしてしまう。
「ワキじゃん、お疲れ」
「みちるはきょうもヤベェ暴れっぷりだったな」
みちるちゃんと脇坂さんは古い顔見知りだそう。
ここのボスとも友達のようにしゃべってしまうみちるちゃんって、いったい何者なんだろう。



