ずっと、そういう気持ちを隠すのに必死だった。
たぶん、自分さえ騙してきた。
いつも寄りかかって、甘えてばかりで、こうちゃんの優しいところ、自分勝手にひとりじめして。
いつだって自分のことばかりだった。
こうちゃんの気持ちなんて考えたこともなかった。
ごめんね。
こうちゃんのこと、それでも大好きで、ごめんね。
でも、こうちゃんのことを大好きだと思うこの気持ちだけは、なんの嘘もなく、一点の曇りもなく、なにも持っていないわたしが持っている、たったひとつの大切な輝きなんだ。
ほんとうだよ。
「季沙、聞いて」
大きな手が、泣きじゃくるわたしの髪を何度も撫でてくれる。
耳元でささやかれる声は、子どもをあやすような響きをしていた。
「季沙が、いってらっしゃいとか、おかえりとか、お疲れさまとか。そういう何気ない一言をくれるから、俺はいつも、頑張れる」
とめどなくあふれる涙が容赦なく、黒いTシャツを濡らしていく。
「季沙がいてくれないと、困る」
もう、わんわん泣いた。
ごめんね。
ありがとう。
大好き。
愛してる。
もはや処理できないほどいっぱいいっぱいにふくれてゆく気持ちを、それ以外にどうすることもできなかった。



