「じゃ、俺の言うことひとつ、聞いてもらおうかな」
パチパチ、かわいい火花を散らす線香花火を見つめながら、こうちゃんがつぶやいた。
「さっきみちるさんに話してたこと、ちゃんと俺に言って」
「え……」
「やなことあるならちゃんと教えてって前にも言った」
みちるちゃんとの会話なんてぜんぜん聞こえていないと思っていた。
だってこうちゃん、アキくんとけっこうしっかり話しこんでいたし。
「聞こえてないって思ってた?」
目を合わせられないままこくりとうなずくと、こうちゃんは顔を伏せ、息を吐くみたいに笑った。
「俺に季沙の声が聞こえないわけないけど」
なんで、いまさら、慣れない下駄のせいで足がじんじんしてくるの。
最低だ。
わたしは今世紀最大のばかやろうだ。
ぜんぶ知っているなんて大口叩いておいて、こうちゃんのことを本当はなにもわかっていない。
本当に、最低。
わたしが最初に不安をぶつけるべき相手は、みちるちゃんじゃなく、ほかの誰でもなく、世界でたったひとり、こうちゃんじゃなきゃいけなかったのに。
こうちゃんは、そうされることを望んでいたに決まっているのに。
どろどろとした後悔が胸いっぱいに広がってゆく。
そうだよ。
だから、わたしはいつもダメなんだ。
わかっている。



