「あー! こうちゃんへったくそー!」
「この線香花火が悪い」
「言い訳だなっ」
むっとした横顔をつんとつついたのと同時に、わたしの線香花火もあっけなく落ち、まるい赤い玉は駐車場の白いタイルにいともたやすく溶けてしまった。
「じゃあ次のやつで勝負する?」
「いいよ」
真剣に渾身のひとつを選んだわたしとは裏腹に、こうちゃんは特に選ばず、いちばん手前のを簡単に持ち上げていった。
「勝敗をつけるのになんにもなしじゃつまんないから、なんかルール作ろうよ」
「ん、いいよ」
「なにがいい? アイスでも賭ける?」
「じゃあ、負けたほうが勝ったほうの言うことをひとつ、なんでも聞く」
「ひゃー! いいよ、どきどきするね」
これは勝たないとちょっとやばいかもよ。
こうちゃんはたまにいじわるスイッチがオンになるから、恥ずかしいことを言わされたり、させられちゃうかもしれない。
もはや勝つ気マンマンで、なにしてもらおうかな、なんて考えながら先っちょに火を点けたのだけど。
こうちゃんは涼しい顔で、さっきまでのヘタクソがまるで嘘みたいに、圧倒的な勝利を華麗に飾ったのだった。
「な、な、なんで……」
「だからさっきのは花火のほうが悪かったって」
「やだ、納得いかない! もういっかい!」
「ダメ」
そういえばこうちゃんって勝負ごとにものすごく強いのだ。
試験と名のつくものに落ちたことはないと思うし、ライブでもミスをしたところをいままでに一度だって見たことがない。
そんな、本番にタフすぎる人に勝負を挑んだわたしがバカだった。
ぷりぷりしているわたしの隣で、こうちゃんは少し笑って、新しい線香花火に火を点けた。



