「線香花火?」
「うん、うちの駐車場で。コンビニで買っていこう」
めずらしい。
てっきり人混みでくたくたになっているのかと思っていたのに、まだそんな体力が残っていたとは。
「どうしたの、急に」
「なんとなく、昔は季沙とよく手持ち花火してたなって思い出したから」
「えー! じゃあいっぱい買っていこうよ!」
「えー……」
「ふふ。やっぱりそんな体力はないかあ」
そういえば、そうだった。
きょうみたいな打ち上げ花火をわたしが怖がるから、相川家と瀬名家はよくいっしょに手持ち花火をして遊んでいたんだよね。
そう、あれはまだ、直おじちゃんが生きていたころ。
あのころは、ふたつの家族でいっしょに旅行したり、バーベキューしたり、プールに行ったり、いろいろなことをしていたっけ。
なつかしいな。
子どものころは本当に楽しかった。
まるで、お父さんとお母さんがふたりずついるみたいだった。
こうちゃんのことを本当のお兄ちゃんだって信じていた時代があった気がする。
弟だとも思っていたかもしれない。
あの楽しかった時代、
無邪気で、無鉄砲で、純粋だったころは、もう二度と戻ってはこないんだね。
直おじちゃんが二度とわたしたちの元へ、こうちゃんの元へ、清枝ちゃんの元へ、帰ってきてくれないように。



