グッバイ・メロディー



やっぱり、ギターを弾くこうちゃんが世界でいちばんかっこいいよ。


ずっと見ていたい。

この場所から、こうちゃんのこと、みんなのこと、ずっと見上げて、空気を震わせながら届いてくる音楽に身を委ねていたい。


アキくんがたまにしゃべるだけでほとんどMCをしないあまいたまごやきの30分間は、きょうもあっというまに終わってしまった。


「ありがとうございましたー! このあとも楽しんでってくださーい!」


汗に濡れた金色の毛先がキラキラしてきれい。

少し長めの髪を無造作にかき上げ、アキくんが屈託のない笑顔で言うと、小さなライブハウスは歓声で揺れた。


「あ、それときょうのセトリそのまま入れてるCD売ってるんで、買って帰ってください!」


思い出したように付け加えた言葉にどっと笑いが起こる。

買ったよー!という甲高い声がチラホラ上がると、すでにマイクを置いたアキくんが地声で「ありがとー」と心からうれしそうに答えるのだった。


めいめい好きなメンバーの名前を叫ぶのはほとんど女の子だ。

それでも、たまに男性っぽい声も聞こえたりして、男女問わず応援されていることに、ついついわたしが喜んでしまうよ。


それでもそのすべてに対してこうちゃんはなにも答えず、一秒たりともにこりともせず、黙ってステージから消えてしまった。

今夜も、最初から最後まで、見事になんにもしゃべらなかった。


こうちゃんは昔から、前に出たがるような男の子ではなくて、そういうところはきっといまでもまったく変わっていなくて。

ステージの上でギターをかき鳴らすこうちゃんはかっこよくて大好きだけど、こんな人がどうしてバンドを組んでライブをしようと思ったんだろうって、たまに不思議になるよ。