でも、大人だからこそ、行けない事情があるのかもしれない。
かつて子どもだった人たちはきっと、現実の甘くない、すっぱい部分をちゃんと知っている。
それを知っているからこそ、子どもじゃなくなったんだ。
みちるちゃんはもう、自分の足で、自分の道を歩いている人だ。
「じゃあ……遠距離恋愛になっちゃうってこと?」
「そうだね、当分は仕方ない。でもいろいろ落ち着いたら、そのうち行こうかなあとは思ってるよ」
アキくんはみちるちゃんを連れていかないし、みちるちゃんはアキくんに連れていってもらわない。
そうだ、ふたりとも、自分の意思で、自分の力で、自分の足で、東京に行くんだよね。
こうちゃんに連れていってもらう、手を引いてもらう、わたしとはぜんぜん違うんだ。
「季沙は洸介くんと一緒に行くの?」
「あ……うん、とりあえずはそのつもりで、まだわかんない、けど」
弱々しく消えていく語尾。
自信なさげに区切られたちぐはぐの言葉。
しゃべりながら、悲しくなってくる。
そんなわたしに、みちるちゃんはそっと微笑んだ。
大人の女性の顔だった。
「そっか。ま、まだ時間あるし、ゆっくり考えて、ふたりで話し合って決めたらいいと思うよ。大切なことだもんね」



