「なに、どした?」
はっとする。
落ちかけていた視線を持ち上げると、心配そうなふたつの大きな瞳は、すでにわたしの情けない顔を映していた。
慌てて笑顔を作った。
「ん、なにが?」
「なにが、じゃないよ。いま一瞬すごく泣きそうな顔してた」
「そ、そうかな?」
「なんかあったんでしょ。お姉さんに話してみ?」
やんなっちゃう。
せっかくの夏祭りなのに、浴衣を着て、お洒落もしてきたのに、周りの人はこんなに楽しそうなのに、わたしって本当に空気も読めないんだ。
だけど、こんなことを言ってもらえると、どうしても甘えたくなってしまう。
泣き言を聞いてほしくなってしまう。
横目でちらりとこうちゃんを見ると、すっかりアキくんと話しこんでいて、こっちの声は聞こえていないみたいだった。
「みちるちゃんは……東京、行くの?」
「え、彰人と一緒に? 行かないよー。仕事もあるし、住んでるアパートの契約も中途半端だし、行かないっていうか、行けないかな。少なくとも、次の4月からすぐにって言われてもねえ」
「え……そうなんだ」
てっきりいっしょに行くものだと思っていた。
アキくんが連れていくんだろうと踏んでいた。
それに、みちるちゃんは、もう大人だから。
「ま、それでこないだ大喧嘩したんだけどね。文句があるならあたしひとりくらい食わせていけるようになれって話よ」



