「ヒロは?」
挨拶もなしに、いきなり、こうちゃんがアキくんに訊ねる。
「さあ。人混みウゼェって言ってたから来てないんじゃね? 連れてくるオンナもトモダチもいねえし、あいつ」
あきれたように、アキくんが笑って答えた。
そうか、わたしはアキくんに会うのってかなり久しぶりだけど、こうちゃんはいまも毎日のように顔を合わせているんだっけね。
以前のようにスタジオについていくことがなくなったから、そのあたりの感覚がもうぜんぜん違っている。
こんなささいなことでさみしさを感じてしまうくらいには、わたしはいま、けっこうナーバスなのかもしれない。
「よかった」
浴衣に合わせて彩られた指先。
赤色のワンカラーをベースに、親指と中指だけカラフルなシェルを乗っけているおしゃれな指が、ゆっくりとこっちへ伸びてきていた。
そして、不器用なりに1時間くらいかけて作ったわたしの後れ毛に触れると、みちるちゃんはそっと顔を覗きこんできたのだった。
「洸介くんと仲良くやってるみたいだね」
「そんな……みちるちゃんのほうこそ」
「えー、そう見える?」
見えるよ。
すごく、幸せそうだよ。
毎日いっぱい笑っているんだろうなって、顔を見たらすぐにわかってしまうくらい。
みちるちゃんはアキくんの隣で、こんなにもかわいく笑うんだね。
照れたふうに、困ったみたいに笑いながら、「やめてよ」なんて言うんだ。
アキくんにみちるちゃんがどうにも必要だったように、みちるちゃんにもアキくんが、すごくすごく必要だったんだと思う。
みちるちゃんは、アキくんについていくのかな?
いっしょに、東京に行くのかな?



