グッバイ・メロディー

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毎年7月下旬に開催される地元のお祭り。

去年は花火の音だけを部屋でさみしく聴いたそれに、今年はいっしょに来ることができた。


本当は、心のどこかで、今年もぜったい無理だろうなと思っていたから、こうちゃんのほうから誘ってくれたときは、本当にうれしかった。


「ねえ、きょうってほんとに予定なかったの? たまたま?」


からん、ころん。

下駄がアスファルトを軽快に蹴る音が心地いい。


覗きこむように右側を見ると、頭ふたつ分くらい上にある横顔がふっとこっちを向いた。


目が合う。

こうちゃんが、むーっとした、なんともいえない顔をする。


あ、しまった、
と思ったときにはもう、「ごめん」の一言はおだんごの頭に落っこちてきていたのだった。


「さすがにもう怒ってないってば。そんなに謝られるとわたしが怒りんぼみたいでやだ」


まあたしかに、1年前は自分でもびっくりするくらい怒ってしまった自覚があるから、むしろその点においてはわたしのほうが謝らなきゃいけない。


「27日だけは絶対予定入れないってずっと決めてた」

「わたしが怒るから?」

「違う、約束してたから。一緒に祭り行くって」


こうちゃんは本当に、いつも優しい。

だって、きょうの予定を空けるために、ひょっとしたらものすごくお願いをしてくれたのかもしれない。


「それに、水色の浴衣、俺が見たかったから」


恋人になってから、はじめての夏祭り。

何度もいっしょに来ているはずなのに、いつもの見慣れた街並みなのに、なんだかきょうは景色が特別に違うような気さえしてしまう。


絡んだ指先が愛しいよ。

家を出るとき、こうちゃんのほうからぎゅっとつないでくれた。