グッバイ・メロディー



「離れることを寂しいと思うのはよくわかる。ずっと一緒に育ってきたんだもん。だけど、だからこそ、一瞬の感情に流されないで、もう一度よく考えてみなさい」


ああ、もしかしてわたしはいま、あのときと同じ間違いをしようとしているのかな。


なんの保証もない、
とこうちゃんは言った。

たくさんつらい思いをさせるかもしれない、家族や友人とも離れることになる、と。


あれはきっと全部、わたしじゃなく、こうちゃんの不安な気持ちだった。


こうちゃんだって怖いのかもしれない。

なんの保証もない、つらい思いをするかもしれない、味方がひとりもいない場所へ、ギターだけを背負ってからだひとつで行くんだもん。

怖くないわけがないよね。


そしていまのわたしに、その怖い気持ちを取り除いてあげることは、絶対にできないんだ。

むしろ、きっと増長させてしまうだけ。


わたしには、こうちゃんが大きな壁にぶつかったとき、それを砕いてあげられる強い拳もないし、勝てそうにない敵と出会ったとき、それと闘うことのできる剣もない。

道に迷ったとき、案内してあげられる地図や方位磁石も持ち合わせていない。


だって、夢も目標もないわたしは、自分の行く方向すら知らずに歩いているから。

これまでずっと、こうちゃんに手を引かれて歩いてきただけだから。


あんまりふがいなさすぎて、もうこの場で消えてしまいたくなった。


こうちゃんのためにできることがなにもなくとも、せめて、重荷ではありたくないよ。

わたしがこうちゃんにとっての“心配事”になりたくない。