「お母さんも、お父さんと同じ意見かな」
コーヒーを3人分、マグカップにいれてきてくれたお母さんが、お父さんの左隣に腰かけながら口を開く。
「いまは全部が順風満帆で、ふたりの関係もうまくいってるかもしれない。だけどなにか壁にぶつかったとき、うまくいかないことがあったとき、いまの季沙に洸介を支えられる? ただついていっただけの季沙に、本当に洸介を守ることができる?」
「それは……」
「いつまでも洸介の優しさに甘えてちゃダメ。そういう関係はきっと長続きしないよ。これは極論だけど、そういう季沙は、いつか洸介にあっさり捨てられちゃう可能性も大いにあると思うな」
あまりにも的確で、至極まっとうな意見だ。
わたしをここまで育て上げてくれた偉大なふたりの言葉が、しんしんと心に積もっていく。
「お父さんとお母さんは、季沙のことも、洸介のことも、同じだけ大切に思ってるの。だからふたりが苦しんだり、傷ついたりする姿は、できれば見たくない」
なぜか、ふと思い出した。
小学生のころ、こうちゃんが熱を出して、いっしょに学校へ行けなかった朝のこと。
わたしはびいびい泣いたんだ。
やだ、こうちゃんがいっしょじゃないなら学校行きたくない、こうちゃんといっしょがいい、って。
そしたらこうちゃん、行くって言った。
ふらふらになりながら学校の準備をして、泣いているわたしの手を握って、いっしょに学校まで行ってくれた。
大丈夫かと訊ねるわたしに、こうちゃんは何度も平気だと答えたけど、あのとき本当は熱が40℃近くあったんだよね。
もちろん朝の会までもたなかった。
こうちゃんはわたしを教室まで送り届けた瞬間に、その場で倒れてしまったの。



