「やめておきなさい」
押し黙り、うつむいているわたしを見て、お父さんが短いため息をひとつつく。
「なんの目的もなく、ただ傍にいたいからという思いのみでついていくのは、絶対によくない。そんな季沙が隣にいることが、洸介にとってなにかプラスになると思うか」
「で、でも……こうちゃん、連れていきたいって言ってくれたもん」
「本当に季沙はこのまま、ずっと洸介に“連れていってもらう”だけの人生でいいのか?」
一瞬で顔に血がのぼり、かあ、と熱くなるのが自分でもわかった。
「季沙が、それでもいい、洸介のおまけでいい、ついていきたいんだ、と思うならこれ以上お父さんはなにも言えないけど」
少し考えるみたいに、言葉を区切って。
「目的もなにもない、現状なにもできない季沙が、夢をもって出かけていく洸介の重荷になってしまうことは忘れちゃいけないよ。少なくともいま、洸介に季沙の人生をも一緒に背負わせてしまっていることを、ちゃんと自覚だけはしておきなさい」
本当に厳しい声色だった。
決して、威圧的というわけじゃなく。
いつもの優しいしゃべり方の真ん中に、ぴんと張りつめた糸を通したような。
いつも友達みたいに同じ目線に立ってくれるお父さんだけど、これはきっと“大人”としての意見なんだと思うと、鳥肌が立った。



