会場に入って10分ほどみちるちゃんとしゃべっていたら、いきなり照明がふっと落ち、同時に鼓膜を殴るような爆音が鳴り響いた。
アナウンスのかわりにオープニングアクトがライブの始まりを告げたのだ。
はじめてあまいたまごやきがステージに立ったのも、この15分間のオープニングアクトだった。
押し寄せる波のように、ステージのほうへ観客が寄っていく。
会場がぐらぐら揺れ始め、目の前で生きている音楽以外のすべてが消滅する。
脇坂さんはタイムテーブルを作らないから(当日のリハで順番を決めるらしい)、あまいたまごやきがいったいどのタイミングで出てくるのかはいつもサプライズ。
今夜は、オープニングアクトを含めた5組のうちの、4番目だった。
機材の入れ替えをする転換時間のうちに上手の最前列を確保し、準備するこうちゃんをじっと見守る。
真剣にエレ吉くんをチューニングしている顔はやっぱりいつもとはどこか違う。
こんなに近くにいるのに、ステージを境界線にして、別々の世界にいるみたいだよ。
別々だった世界が繋がるのは、高校生と中学生の男の子たちが思い思いに、それでいてひとつになって楽器を鳴らした、その瞬間。
「こうちゃん!」
毎度のことながら、思わず名前を呼んでしまった。
とたん、エレ吉くんをかき鳴らしつつ、照明のまぶしさから逃げているようなこうちゃんの目が、わたしを探したのがわかった。
こんな爆音のなかでも、声って届くものなの?
ばちっと視線が合う。
薄いくちびるがちょっとだけ口角を上げる。
全身に鳥肌が立ち、悲しくもないのに涙腺が緩みはじめた。



