最近は長風呂はしないようにしている。
ぼうっと湯船に浸かっているあいだ、いろいろ考えこんでしまって、なんだかもうどうしようもなくなるから。
きょうも即行でリビングに戻ってきた俺に、母さんが「なんか早くない?」と笑った。
「ごはん、餃子焼いてあるから食べていいよ」
「ん、ありがとう、あとで」
「なに?」
「いま腹減ってない」
「食べてきたの?」
「いや」
曖昧に答えてソファに座った。
力を抜いて体重を預けると、ぐいぐい吸いこまれるみたいに体が沈んで、もう一生立ち上がれないような気にさえなる。
目を閉じてしばらくすると、甘いココアのにおいがふいに嗅覚をくすぐってきた。
「なんか元気ないね」
母親という生き物は、子どもの前で、圧倒的に偉大だ。
母さんと一緒に過ごしている時間なんてきっと本当に微々たるもので、顔を見てゆっくり話すことも最近ではめっきり減って。
それでも、息子のほんの少しの変化がわかってしまうものなのか。
「まあとりあえずココアでも飲んでよ」
「……ありがとう」
3人掛けのソファに、母親と息子、隣どうし。
こんなふうに座るのはいつぶりだろう。
こんなにも細くて小さい人だったかな。
ああ、そうか、俺がデカくなっただけか。
昔は母さんのこと、世界でいちばん大きな存在にさえ見えていたというのに。



