グッバイ・メロディー



スタジオを出たら外は霧雨だった。

春の雨は生あたたかいくせに、どこか寒々としていて気持ち悪い。


傘は持っていなかった。

ギターを庇うようにしていたら見事に全身びしょ濡れだ。



「おかえりぃ」


めずらしくすでに明かりの灯っているリビングで迎えてくれたのは、幼なじみの恋人でなく、今夜は母親だった。


「ちょっと、ぐっしょりじゃん! 傘持っていかなかったの?」

「面倒で」

「雨予報だったでしょ。もう、バカだなあ。とっととお風呂入ってきてよ、もう湧いてるから」


ギターケースと一緒に制服のジャケットを剥ぎ取られる。


仏壇の置いてある和室には除湿器があり、雨の日や梅雨場なんかは乾燥室として使うことがほとんどだ。

自室に着替えを取りに行った帰り道に和室に寄り、べたべたになった制服のズボンをハンガーに掛けているとき、写真のなかの父さんと目が合った。


自分で言うのもなんだが、見事によく似たもんだよなあと思う。


それは決して顔だけに限ったことじゃなく。

しゃべるのが得意じゃなかったところとか、朝に弱かったところとか。


もうおぼろげな部分はかなり多いけど、たまに自分のなかの端々に、父親を感じることがある。

DNAというのはかなり揺るぎないものらしい。