「あのコの人生は俺とは関係ないよ。一緒に連れていく権利すらないと思ってるけど」
このくらい割りきって考えられたらどんなにいいか。
「なにがあるのかわからないのに、俺はあのコの人生に責任はとれない」
こんなふうにきっぱり言ってしまえたらどんなにいいか。
ヒロも、兄の問いに「誰かを一緒に連れていく気はない」と言った。
むしろおれはついていくだけだ、と。
俺たちは東京に行くのだと、日を追うごとにまざまざと思い知る。
こんなふうな話になると更にそれを実感して、妙な焦りが肥大していく。
ゆっくりに見えても着実にタイムリミットは迫っているのだ。
いつか必ずその日は来る。
もしかしたら俺が思っているよりもずっと早いのかもしれない。
「洸介も早いとこ季沙に言ったほうがいいんじゃねえ?」
「なに」
「置いていく気なんて微塵もねえんだろ」
もう5年目のつきあいになる友人は全部見透かしたように笑った。
「言わなきゃなんも伝わんねえよ。生まれたときからずっと一緒で、以心伝心的なスピリチュアルがあるのもわかるけどさ」
「べつに……」
「言えよ。ついてきてほしいって。おまえは季沙がいねえとたぶんダメだよ」
そんなことは俺がいちばんよく知っている。
「背負えるだろ? 季沙の人生くらい、まるごと全部」
めまいがする。
なんでそういうことを平気で言えるんだ?



