⋆°。♬
「洸介は季沙、連れていくのかよ?」
いまいちばん話題にしてほしくないことをいとも簡単に口にされた。
ギター(季沙が“エレ吉くん”と呼ぶやつだ)を触る手を止め、顔を上げると、いつも能天気な色をしていることの多い顔がちょっと気遣うように歪んでいた。
「……アキは?」
「オレはまあ、相手がもう社会人だし、立派な大人だからなあ。こっちが連れていくとか置いていくとかじゃねえよ」
ついてきてくれませんかの世界だよ、
と少しおどけて。
「簡単に決められることじゃない、ってスッパリ言われたけど。まあ一緒に行くとなると仕事辞めたりもしなきゃなんねえし。それでも一緒に行きたいとは伝えた」
連れていくでも置いていくでもなく、一緒に行きたい、というのは、とてもアキらしい台詞だと思った。
言いたいことをためらいなく言える、伝えたい気持ちをちゃんと伝えられる、こういうところは昔から本当にうらやましく思っている。
「まあ、ワキさんはああ言ったけどさ」
いつまでも黙っている俺に、アキがめずらしく言葉を選ぶようなそぶりを見せた。
「季沙はふたつ返事でついてきてくれるんじゃねえの? 洸介がどうってより、あいつもけっこうしっかり洸介がいないとダメなタイプだろ。なーんも悩むことなんかねえって」
「べつに……そうでもないんじゃない」
「なんだよ、いきなりどうした?」
思わずひねた態度をとってしまった。
アキがちょっと笑う。
「ついていかないって言われちゃったか?」
「いや」
「なんだよ」
「なんも言われなかった。いつもの調子の『がんばってね』だけ」
「洸介は季沙、連れていくのかよ?」
いまいちばん話題にしてほしくないことをいとも簡単に口にされた。
ギター(季沙が“エレ吉くん”と呼ぶやつだ)を触る手を止め、顔を上げると、いつも能天気な色をしていることの多い顔がちょっと気遣うように歪んでいた。
「……アキは?」
「オレはまあ、相手がもう社会人だし、立派な大人だからなあ。こっちが連れていくとか置いていくとかじゃねえよ」
ついてきてくれませんかの世界だよ、
と少しおどけて。
「簡単に決められることじゃない、ってスッパリ言われたけど。まあ一緒に行くとなると仕事辞めたりもしなきゃなんねえし。それでも一緒に行きたいとは伝えた」
連れていくでも置いていくでもなく、一緒に行きたい、というのは、とてもアキらしい台詞だと思った。
言いたいことをためらいなく言える、伝えたい気持ちをちゃんと伝えられる、こういうところは昔から本当にうらやましく思っている。
「まあ、ワキさんはああ言ったけどさ」
いつまでも黙っている俺に、アキがめずらしく言葉を選ぶようなそぶりを見せた。
「季沙はふたつ返事でついてきてくれるんじゃねえの? 洸介がどうってより、あいつもけっこうしっかり洸介がいないとダメなタイプだろ。なーんも悩むことなんかねえって」
「べつに……そうでもないんじゃない」
「なんだよ、いきなりどうした?」
思わずひねた態度をとってしまった。
アキがちょっと笑う。
「ついていかないって言われちゃったか?」
「いや」
「なんだよ」
「なんも言われなかった。いつもの調子の『がんばってね』だけ」



