「俺、東京……行くかも」
いつものわがままで俺をわざと困らせてくれたらいいと思った。
やだ、いかないで、って。
季沙にそう言われたら俺は、いま手にしている全部を捨てることだってできるのかもしれない。
「……うん、そっかあ」
だけど彼女は眉を下げて笑うだけだった。
「きっとそうなるんだろうなって思ってたから、こうちゃんの口から聞けて、ちょっと安心」
ついていくとも、待っているとも、季沙は言わなかった。
いかないでとも、待たないとも、なにも。
俺の告白をただ受け入れ、そして一言、がんばってね、と。
「こうちゃん、がんばってね」
それじゃ頑張れない。
季沙がいない場所で、俺はきっと、なにもできない。



