グッバイ・メロディー



そもそも俺がギターを弾く理由は、季沙にあるのだ。


たしかにきっかけは父さんと母さんだった。

父さんが死んでどうにもさみしくて、母さんとふたりきりの家に耐えられなくて。


毎日泣いている母さんを見て、俺にできることはなにかないのかと子どもながらに必死だった。

そうして苦しまぎれに手に取ったのが、父さんが残してくれたギターだった。


そのときはまだ、当然、こんなに真剣に続けようとは夢にも思っていなくて。

まだ俺があのオモチャを手放さないのは、すべて季沙がくれた一言にある。



――“すっごくかっこいい!”



自分でも本当に、バカみたいな、しょうもない理由だと思う。

俺はけっこう単純明快なやつだ。
我ながら笑える。


だけど本当に嬉しかったんだ。

季沙の前ではかっこいい俺でいたかったから、あの瞬間、こいつを相棒にしようと決めた。


それが、すべての始まりだった。


俺をギタリストにしたのは季沙だ。

だから俺はずっと季沙だけのギタリストだった。

季沙以外のほかの誰のためにも演奏したことなどなかった。


少なくとも、あいつらとバンドを組む前までは。