グッバイ・メロディー



準備したのは250枚だとこうちゃんが言っていた。

数字だけ聞くとどうにも少ない気がして、それだけで足りるのかと訊ねたら、たぶん余るよって答え。

そんなものなの?


「季沙は? 列にならんで買うの? すでに洸介くんからもらってるんでしょ?」

「もちろん買うよ! それでみんなに握手してもらうの!」


いつのまにかすっかり短くなった煙草を灰皿に押しつけながら、みちるちゃんが豪快に笑った。


「季沙ってほんとにただのファンだね!」


だってステージの上にいる瀬名洸介くんは、わたしに起こされるまでベッドから出られないこうちゃんとは、きっと別の男の子。


ライブの日だけ、わたしたちは“幼なじみ”じゃなくなる。

アキくんやヒロくんやトシくんも、いつもよりうんと遠い存在になる。


彼らはバンドマンとしてステージに立つし、わたしはファンとして、それを見に行くんだ。


「それにしても2か月に1回は対バン出て、そのたびに新曲ぶちかまして、たった半年でレコ発なんてね。体力あり余ってるね! みんなちゃんと寝てんの?」


みちるちゃんが7コ年上って感じの顔で言った。
語尾に「若いなあ」というひとりごとみたいなのがくっついた。