グッバイ・メロディー



当たり前みたいに続いていた、この生ぬるい毎日を、俺はもしかして自分で終わらせようとしているんじゃないのか。

季沙の思い描く未来予想図に、俺の姿などもうとっくにないのではないか。


そう思うとなんだかどうにもやりきれなくなった。


「……こうちゃん?」


身をよじり、心配そうにふり向いた顔を左手で捕まえて。

落としたくちづけは、これまでのどんなのよりもきっと丁寧ではなかった。


優しくしたい。大事にしたい。傷つけたくない。


そして、それと同じくらい、

骨の髄まで、俺だけで満たされてほしい。


「こ、こうちゃ……」


そう、俺がもう、とっくの昔からそうであるように。


「……ね、こうちゃ」


何度も俺の名前を呼ぶのを遮ってくちびるを重ねる。

このまま本当に食べることができたらいいのにと、気の狂ったことを頭の片隅で思う。


時折恥ずかしそうにかすかな声を漏らしながら、季沙は与えられる熱を全部受け入れてくれた。


人の口内というのはどこか甘い味がする。

その甘さに、頭の芯がじんじんと火照ってくる。


「……季沙」


ぷは、と酸素を求めて開いた口元を指でなぞった。

ふたり分の唾液が混ざっててらてら光っている。


「び……っくりした、急に、こうちゃん、どうしたの、こんな、おとなのチュウ……」

「ごめん」


突然こんなことをして怖がらせてしまったかもしれない。

少しの罪悪感を覚えて謝ると、季沙は体ごと向きを変え、ぎゅっと首に抱きついてきた。


「ううん、だいじょうぶ。あのね、こうちゃん大好き」


抱きしめ返し、首元に顔をうずめた。

このまま本当にひっついてしまえたらどんなにいいかと、情けないほど女々しいことを思う。