「こうちゃんは?」
シャーペンを握りしめている手のひらに、じっとり嫌な汗をかいているのがわかる。
「こうちゃんは卒業したら、みんなと東京に行くの?」
季沙にはまだ、東京に行くつもりがあるとも、ないとも、伝えられていない。
たぶんほぼ行くで決定だろうし、アキも、トシも、そのつもりでいると思う。
ヒロは必要なら東京の高校に編入しようかとも漏らしていた。
「……さあ」
はじめて季沙に、ついてはいけない嘘をついた。
「え、そうなの? てっきり行っちゃうのかと思ってたよ」
だったら、そう思うんだったら、なんで地元の大学ばかりをそこに書いたんだ?
「季沙は?」
自分でも驚くほどふてくされた声が出た。
「地元から出るつもりないの」
「えー、どうだろ。そんなの考えたこともなかったよ。でもこうちゃんみたいにやりたいことがしっかり決まってるわけでもないし、実家出る自信はまだないかもなあ」
じりじり、じりじり。
背後から巨大ななにかに追いつめられているみたいだ。
――季沙と離れることになるかもしれない。
18年のうち一度も考えたことのなかった可能性の未来が、ひょっとしたら、もう目の前にまで迫っているのか?



